天地同根 万物一体

私が尊敬している先人に幕末の山岡鐡舟先生がいらっしゃいます。「剣・禅・書」を究められた方で、江戸の無血開城を成し遂げた方です。

勝海舟さんが山岡鐡舟さんついて、天地同根 万物一体を体現した男だと語ったそうです。

鐡舟先生は、剣道を修行することは「その真理の極致に悟入せんことを欲し」「天道の発源を究め」「万物太極を究むる」ことを目的とし、そこに精神的な悟りを求めたのである。

私も20代の頃、師匠の山口先生に陳式太極拳で強くなりたいと言っていました。

山口先生は、強さだけを武術に求めていたのでは、虚しいと言われました。強さを得たとしても、人はやがて年老いて死んでいく。生死問題について、人生をいかに生くべきかと問われたことを思い出します。

うわべだけの勝敗を争うのではなく、物事の根本を理解することが上達につながります。

打拳の道は終始敬という字の外ならない。敬を以て専心に志を通せば達成出来ない事はない。

十三勢の法則とは

太極十三勢とも言い、棚,履,挤,按,采,列,肘,靠,進,退,顧,盼,定と言う十三の文字からなっているのです。前の八字は八種類の手法で、後ろの五字は五種類の歩法 をさす。

この十三勢はすべての太極拳の套路、推手に貫通しています。十三勢とは八卦と五行であって「八門五歩」とも称される。

太極八法は四正四隅に分けられ、五行は金、木、水、火、土である。

つまり宇宙の法則を解き明かす古代中国の叡智である易から生まれた言葉なのです。武術を学ぶ究極的な目標は、宇宙の法則を自分の身体で表現することであり、天地同根、万物一体にある。

黙念師容(もくねんしよう)

若き日の山口先生と武壇の劉雲樵大師  

武術を学ぶには、優れた武術家の動作をみなければならない。

そしてその動きを頭に焼きつけて稽古していけば、それが自分の基準となるという意味。

中国武術界では昔から「人より三年修業が遅れても、三年かかって良師を探せ」と言われます。

私も毎年訪中している理由は、本やDVDでは感じることが出来ない、王西安大師の風格、毎年段階的に必ずいろいろな気づきを与えてくれます。

身体を触らせてくださり、気の使い方、放松のタイミング、単式練習における歩法、眼法、手法など、絶対に忘れるなと言われます。

「黙念師容」を念頭に置き、老師から学んできた教えを、自分の身体に丸ごと浸透させていきたいと思います。声聞熏習

 

私も今日、二人の良師に恵まれ、日々稽古出来ることに感謝しています。

 

 

王西安拳法研究会 日本分会発足時代

発勁について  その5

発勁を作用の面から分析してみると、4種類の発勁があげられる。

1つ目は、例えると回転している車輪のへりの部分で勁を発して、相手を飛ばしてしまう用法。

2つ目は、車輪の内部のスポークから発する勁で、スポークの中に入れられたものは、瞬間的に切断されてしまうような用法。

3つ目は、鑽頭勁といって、例えると錐で穴をあけていくような勁で、掩手肱捶の勁がこの用法。

4つ目は、崩炸勁といって、例えると爆弾が破裂したような勁で、相手が自分の腰に抱きついてきても、勁を発して倒すことができる用法。

以上の4つの作用がありますが、陳式太極拳の発勁は加速度であって、力を余計に加えることではないので、稽古の際は、力まずに工夫して研鑽してください。

 

発勁について  その4

陳式太極拳の発勁法には、2種類の方法があります。一つは借法といって、相手の勁を借り、次に相手の勁を撥ね返す方法です。

もう一つは、截法といい、相手の勁を断ち切る方法です。もちろん借法の中に截法があり、截法の中に借法があります。借法の方向は相手の勁と同じ方向で、截法の方向はその逆になります。

 

発勁は腰と胯の速い回転によって発せられる勁である。例えると「でんでん太鼓」の動きに似ています。

また、借法と截法を例えるならば、ボールを受け取るときの動作に似ています。つまり、手をボールの方向に随いながら受け止め(借法)、それから別の方向にボールを投げる(截法)ことに似ています。

発勁について  その3

発勁を行う準備段階、つまり勁を蓄えることを蓄勁と言います。意識を集中して、気を丹田に沈めていきます。同時に吸気を合わせていきます。

身体的には、各部位の筋肉をリラックスさせ、関節もゆるめていきます。意識は弓矢を放つ瞬間の状態であるが、身体は放松している。

今回掲載した、「発勁について その1~その3」のポイントを繰り返し単式で稽古して、体得してください。

 

発勁について  その2

発勁を行う時の下半身については、発勁は後足で打つということです。多くの方は、見ていると前足で打ってしまいがちです。

体重と力の移動が早すぎるのだと思う。多くの方が打つ手を意識してしまい、手打ちになっています。

勁の出発点である後足の指と指のつけ根を意識するようにして、単式で繰り返し稽古してみてください。

 

発勁について  その1

太極拳は、「用意不用力」といって稽古する際、放松(ファンソン)力まないことが要求されます。しかし、陳式太極拳でいざ発勁動作となると、ほとんどの人が力をいれてしまいがちです。

言い方を変えると、多くの人は力を入れて内に勁を閉じ込めてしまいがちです。どうすれば勁を出力できるか。

まず、なるべく遅く発勁することです。どういう事かというと、拳を打つ場合、多くの人は胸のところから力をいれてしまいがちです。つまり、発勁が早すぎるということです。拳を打つ運動線の最後に発勁することが大切です。突くまでの過程はリラックスしているので、拳を打つ速度は実際には速くなります。

工夫して稽古してみてください。

 

套路(型)の重要性 その5

套路(型)における最終目標

山口先生が、台湾の武壇で修行していた時代、劉雲樵大師から次の事を言われたそうです。

 

台湾の武壇で修行時代の山口先生と劉雲樵大師

拳法には3つの要素がある。一つは心身の鍛錬、2つ目が芸術性(内外面が一致した套路は、どこから見ても美しい)、3つ目が護身術という見方である。しかしどこに焦点を合わせて学んでいかなくてはならないかは、第一に上げられた心身の鍛錬が最も重要であることを強調された。

陳鑫も「拳は心の中にある」とはっきりと言っておられる。決して他と競うのではなく、自らの内面を追求して行かなければなりません。

太極道交会の目標である自己確立、自分というものをしっかりと見つめていく。そして自分という人格を完成させていく。そしてそれは太極拳運動(套路)を通じて、完成されるものであるということを信じています。

無功徳常精進

套路(型)の重要性 その4

套路(型)における気付き

型の稽古を継続していくと、身体を常に統一体としてとらえ、部分と全体が連鎖していることに気付きます。つまり部分的な動作であっても、それが足の虚実から、胸の開合へとその動作が全体的に連鎖しており、身体運動を生み出すことに気付くようになります。

また、正しい姿勢は、型を通してつくられます。型でつくられる外形の姿勢と身体の内勁が一致して、はじめて正しい姿勢ができます。

姿勢という言葉は、「姿」に「勢い」と書きますが、型によってつくられる姿に身体の内勁が伴うことによって、型は美しくなり、かつ型のなかの技に勢いが出てきます。