五層の功夫 その1

太極拳は、一陰九陽から二陰八陽、三陰七陽、四陰六陽、そして最終的に五陰五陽と相互作用を学ぶ力学です。

一層 一陰九陽跟頭棍(空架式) 姿勢を正し速度一致、虚実を明らかに、無心にして動く段階。水門を開くが如し。

二層 二陰八陽是散手(ふらつきが激しい)。二層の目的は内勁(纏糸勁)を発する事を稽古する段階。

三層 三陰七陽尤覺硬(なお硬さを感ずる)意をもって気を行じ、身体のあらゆるところに勁をめぐらす事のできる段階。形の修錬により外形のできた今は、外形を捨離して内勁により動く事ができる(内勁により外形を促す)。すなわち内勁が動かないとき外形も動かず内頸が動くとき外形が動く。

 

ここにおいて気血を全身にめぐらすことができ、自信がつく、この段階で化勁がわかり武術となる。太極拳の奥義を身につけて初めて老師より離れて良い(放行)。

しかし内気を貫き通す事ができてもまだ心の欲するままの動きが不自然である(相手の攻撃に対してふらつきがあり、また自らの攻撃にも力の硬さが少し残る)。 次回に続く

太極拳の心得 その3

の道を陰と陽と言い、立の道を柔と剛と言う。立の道を仁と義と言う。

打拳の時の自身の消息として 今ここ

が虚領頂勁

が気沈丹田

が純粋知性

となり、これが天地人合一です

落ちる重力が昇る力となる、この相互作用の力学で神性意識に帰り、万物一体の太極を知るのです。

太極拳を学ぶ者は、陰陽の理をしっかり学び、実践していくことが大切です。

陰と陽は同根のものであり二つに分けられないとあります。陰陽を、開と合に例えると、太極拳の動作において開は合から生まれるし、合は開から生まれます。つまり、開のためには合が必要だし、合のためには開が必要不可欠なのです。(陰陽二気の相合作用)

 

陰陽相対とは別々の事柄ではなく、「相互作用」と身をもって気づき、知るために、調心、調息、調身の三位一体の行が必要となってくるのです。

太極拳の心得 その2

一、太極拳を学ぶには驕りを慎まなくてはならない。驕れば損を招く。俗語にも、「天外に天あり」と言う。謙遜な心こそ人の教えが耳に入るもので、誰でも良い忠告を与えてくれるものだ。多くの忠告に耳を傾けるようになれば大したものである。

一、太極拳を学ぶには、細心な思考を必要とする。よく考えなければ道理もはっきり理解出来ず、前後の道筋に暗く、一気貫通の意味が分からないから太和元気の原理を学び得ることが出来ない。

一、太極拳を学ぶ事は陰陽開合のの理を学ぶ事である。吾等の身体の中にはもともと自然に陰陽開合の理が存在しており、此れに逆らうことは出来ない。(伝授者は規則を教える。それは即ち大中至正の理である。)

太極拳の心得 その1

太極とは先人が陰陽の理に基づき無名を以て名とした故に太極と言われる。太極拳の剛と柔、開と合は、丁度太極の陰陽の理に適い矛盾の統一を形成している。

明朝洪武七年(1374年)始祖卜耕は、読書の余暇に、陰陽開合運転周身の術を子孫に教え、以て消化飲食の理法となし此れは太極に基づく学問で、故に太極拳と呼ぶ。

一、太極拳を学ぶには敬を以て為す。不敬であれば外は師友を疎かにし、内は身心を疎かにする。身心不拘束であれば芸を学び得る事は到底難しい。(敬心道場は、ここから命名されています)

一、太極拳を学ぶには狂いがあってはならない。狂えば事故が起こる。手が狂ってはならないばかりでなく、言葉遣いにも狂いがあってはならない。。容姿風貌には儒雅な気風を保つべし。外容の狂いは内容を失う事につながる。(武徳のない者に伝えたら、単なる凶器になってしまう。)

拳理と十三勢の融合

太極拳の拳理に則り、身体を動かし、十三勢の法則を結びつけて、陰陽、開合、剛柔、松緊、虚実、長短、収放、昇降、叶納、動静、蓄発、伸縮等の中で、太極の陰陽の変化を体得していきます。

 

先人も曰く「拳を稽古するには、まず拳理を理解しなければならない。拳理に通じれば、功法(内功)に精通することができる」

功法と套路と推手の三つを拳理と融合して稽古していかなければならない。なぜなら、この三者を相互に稽古し、助け合ってこそ、内外合一と上下相随に達することが出来るからである。

 

拳理は練功の指針であり、功法は実践の中で積み重ねた成果である。

王西安老師の三式の動画を掲載

ホームページの「王西安老師の紹介」の一番最後の所に、王西安老師と一緒に稽古している三式の動画を掲載しました。2分27秒と短い動画ですが、参考にしてください。

陳氏太極拳の拳理

山口先生が1979年に中国大陸に渡った際、陳氏太極拳の嫡子である陳小旺老師から、陳氏太極拳の拳理の説明があったそうです。

陳老師曰く 「人人各居 一太極」(人は全て本来太極にある)

この理を聞いた時、山口先生は拳禅一如の理、いや禅からみて禅そのものであったので、嬉しくなって陳老師に禅問答を試みたそうです。

結局のところ「太極拳とは何か」

陳老師曰く 「剛柔相済」と問う

「ならば、太極拳は何を学ぶのか」

陳老師は我が意を得たりとばかりに、表情を和ませ、「無に帰ることにある」と問う

禅僧の山口先生は、さすが陳氏の嫡男、髄を得たりと感動したそうです。

陳氏太極拳の拳理に「万有の展開は陰陽二力の作用であり、人もまた然り、それ故に太極拳を学ぶとは陰陽の理法を学ぶことである」と解かれてあります。

 

天地同根 万物一体

私が尊敬している先人に幕末の山岡鐡舟先生がいらっしゃいます。「剣・禅・書」を究められた方で、江戸の無血開城を成し遂げた方です。

勝海舟さんが山岡鐡舟さんついて、天地同根 万物一体を体現した男だと語ったそうです。

鐡舟先生は、剣道を修行することは「その真理の極致に悟入せんことを欲し」「天道の発源を究め」「万物太極を究むる」ことを目的とし、そこに精神的な悟りを求めたのである。

私も20代の頃、師匠の山口先生に陳式太極拳で強くなりたいと言っていました。

山口先生は、強さだけを武術に求めていたのでは、虚しいと言われました。強さを得たとしても、人はやがて年老いて死んでいく。生死問題について、人生をいかに生くべきかと問われたことを思い出します。

うわべだけの勝敗を争うのではなく、物事の根本を理解することが上達につながります。

打拳の道は終始敬という字の外ならない。敬を以て専心に志を通せば達成出来ない事はない。

十三勢の法則とは

太極十三勢とも言い、棚,履,挤,按,采,列,肘,靠,進,退,顧,盼,定と言う十三の文字からなっているのです。前の八字は八種類の手法で、後ろの五字は五種類の歩法 をさす。

この十三勢はすべての太極拳の套路、推手に貫通しています。十三勢とは八卦と五行であって「八門五歩」とも称される。

太極八法は四正四隅に分けられ、五行は金、木、水、火、土である。

つまり宇宙の法則を解き明かす古代中国の叡智である易から生まれた言葉なのです。武術を学ぶ究極的な目標は、宇宙の法則を自分の身体で表現することであり、天地同根、万物一体にある。

黙念師容(もくねんしよう)

若き日の山口先生と武壇の劉雲樵大師  

武術を学ぶには、優れた武術家の動作をみなければならない。

そしてその動きを頭に焼きつけて稽古していけば、それが自分の基準となるという意味。

中国武術界では昔から「人より三年修業が遅れても、三年かかって良師を探せ」と言われます。

私も毎年訪中している理由は、本やDVDでは感じることが出来ない、王西安大師の風格、毎年段階的に必ずいろいろな気づきを与えてくれます。

身体を触らせてくださり、気の使い方、放松のタイミング、単式練習における歩法、眼法、手法など、絶対に忘れるなと言われます。

「黙念師容」を念頭に置き、老師から学んできた教えを、自分の身体に丸ごと浸透させていきたいと思います。声聞熏習

 

私も今日、二人の良師に恵まれ、日々稽古出来ることに感謝しています。

 

 

王西安拳法研究会 日本分会発足時代