太極拳は悟りへの道

大自然や大宇宙の法則を科学や哲学、宗教とするならば、武術の神髄もまた大自然の法則を技法にあらわしたものである。真正な武術はすなわち宗教・哲学・科学などと帰するところ同じものである。

もしも口でいうように真実の道にかなったものならば、修行年数がふえるにつれて技術と共に精神も成長していくはずである。

長きにわたって修行を続けている者が、武術や芸術を名声・財・権力などを求めるための手段にしているとしたら、すでに道を口に出す資格はない。

道教でいう道とは「己を大自然に合わせ陰陽の調和をたもち、四季や自然のリズムと同調した生活を送り、大自然を愛し大自然と一体となって生涯を送り、長寿をまっとうして自然死をとげる」ことである。

少なくても理論や形式だけで実践のない教えや新興宗教よりも、静動合致の武術の方が完全なものといえる。

「悟り」とは、「限りなく素直な心(敬いの心)になること」であるとともに、「その素直な心を決して意識しないで行動できること」である。

初心にかえり日々研鑽すべし

平成3年7月のお便り「敬心」より掲載


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