稽古について

会員の多くは普段の練習(いわゆる一人稽古)を続けることに難しさを感じていると思われる。どうしたら、単調な形(套路)の稽古を毎日のように続けられるか。

まず、太極拳を学ぶ目的を明確にすることである。目的は各自色々とあってよい。一般的に武術界では、一に心身の鍛錬、二に芸術性、三に護身術と言われている。

それから、太極拳のもつ魅力を自分で掘り起こしてみよう。太極拳のことを、もっとよく知る努力も必要であり、いかに優れているかを理解しておく。その上で、稽古の仕方について触れる。

初めは、とにかく形を正しく覚えることである。形を覚える段階では、喜びもあるが、第二層における反復練習が中々続かない。それはどうしてか。単調で、手応えがないからである。

では、どういう点に気をつけて稽古すれば良いか。大切なことは、自分勝手なイメージをもって稽古しないことである。

つまり、指導者の正しい動き、王西安老師、山口老師の動きを素直(敬)に真似することが必要である。これを敬いの姿勢と言う。

師と同じような動きが出来ない自分に、悔しさを覚えるようでなければいけない。形を反復練習し続けると、「気」の存在を知るようになる。本来、気というものは、とても小さいもので筋肉の力に頼って動いているような内は、その存在に気づかない。

しかし、太極拳の動きそのものに、身をゆだねることが出来るようになってくると、気を理解でき、とても大きなものと感じられてくる。そうなれば眼光さえも変わってくる。足腰が弱いと、どうしても上半身の力で形を作ってしまうので、動きも貧弱になり、落ちる力、太極拳の動きを待てる余裕もなくなってしまう。

王西安大師に学ぶ

精気神という言葉があるが、中国の高名な武術家、卜文徳老師曰く、

「天に三つの宝あり、すなわち月、陽(日)、星

地に三つの宝あり、すなわち木、土、火

人に三つの宝あり、すなわち精、気、神」と、これを稽古の段階であてはめると、

有形(精)の段階・・・一つ一つの形を正しく学ぶ段階

無形(気)の段階・・・始終、流れのある段階 反復練習「拳を打つこと万遍、神理自ずから現る」

心の中に入る世界(神)・・・動きを感じなくなる段階=動中の静 形は忘れる為にある。

太極拳を学ぶには、しばしば数千言を費やしても、その妙を尽すことはできない。しかし、身をもって法を説けば、非常に簡単に思われる。難しいのは修行であり、時に難しいのは、長く修行することである。

※ 平成2年12月のお便り「敬心」より掲載

 

 

 


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