陳式太極拳の風格

コロナの感染拡大のため、自主稽古を余儀なくされている方々のために、今から30年前に地方の会員の方々に発送していましたお便り「敬心」の内容を掲載したいと思います。

陳式の名家、洪均生老師の「太極拳品」を紹介します。

1、端厳(初まりは厳格さを)・・・学ぶ者は鍛錬の中で厳しさ、難しさの中から規律を求め身につけねばならない。ゆえにまず厳格を主とする。拳は小さいが、身体を強くする、眼、身法、手法の規律を守り、動静開合、剛柔曲直、は螺旋の協調、対立物の統一である。

2、圓活(穏やかに)・・・拳を学ぶには規律を厳守するが、拘束ではない。厳格さの中に円転する穏やかさに注意すること。太極運動は、円周から離れず、上下相随でまず螺旋による弧の線で転換させ、内外へ循環をはかる、虚実はお互いの根となる。

3、軽妙・・・穏やかさは拘束を解く方法であり、軽妙さは穏やかさの効果となる。

4、沈着・・・軽妙の後に沈着を挙げたのは、目標もなくふわふわとするのを恐れるからである。沈着にする鍵は、頂勁にして身体を正し、重心の平衡を失わず、眼法は目標を注視し、動中の静を保つこと。

5.雄大・・・沈着さは内勁であり、雄大さは気勢である。両者が相互に表裏をなすには、規則の反復鍛錬に徹すれば、おのずと堺地に到する。

6、超逸・・・雄大さのみに片寄れば粗野となる。謙虚に謹しみ深くし、超逸したものを求める。

7、精密(充実)・・・超逸は規則を破ることではない。精密に技を研磨すれば空きのない充実に到する。

8、纏綿・・・充実とは小さめにまとめることで、これを調節するのが纏綿である。対立物の統一法則を保持するためである。

9、精神・・・外形の運びは充実した纏綿で表わし、精神は厳粛かつ活発さを表現する。

10、含蓄・・・精神状態が外に出過ぎてしまえば欠点となる。つまり含蓄が必要となる。

11、悠揚・・・かたくなな含蓄ではなく、おおらかにして悠揚迫らざるもの。

12、深遠・・精励すればするほど湧き出る泉のように尽きぬ妙味がある。

13、自然・・・力強い書の筆法をそのまま、拳法に移せば自然の妙となる。

太極拳は伝統的運動種目に属するが、理論と実践には完璧な芸術性を具えており、さらに体質の向上に適した運動法でもある。

「詩には詩の品格があり、書には書、拳にもまた品格がある。拳の風格の良し悪しは、その人の人格をもって基準となる」


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