第4章 出家を目指して

物心がついた頃から「どちらに転んでも大丈夫な世界って有るのか!」が私の命題でありました。
ちょうどその頃、NHKの大河ドラマ太閤記が始まっておりました。
(先頃、そのドラマの主人公であった、秀吉役の緒形拳さんが亡くなられました。私の人生の岐路にあって、暗示的な役割を演じて下さいました有り難うございました。心から御冥福をお祈りいたします。あなたは私にとって今でも秀吉です)
そのドラマの中で、織田信長が“人生五十年太く短く”と、謡い舞う場面がありました。私はその時、この“太く短く生きる”という言葉がえらく気に入って、その時(よし!私もどうせ生きるのなら太く短く、最高の生き方をしようではないか!)と深く決心をいたしました。
そして一番偉大な生き方は、なぜか「世界平和のために生きる事である」と考えました。そこまでは良かったのですが、その為にはどのように行動したら良いのか、それが分からず、ただその当時かなり影響を受けていた『アニメ鉄腕アトム』の世界や映画地球防衛軍等ともだぶらせて、自衛隊に行って最強の武器を開発しようと考えました。
しかし幼稚なりにも「世界平和は武力で成し遂げられるものではない」という事はすぐに気づき、次にテレビ、スーパーマンの中に出てきた精神世界に興味を持つようになって、超心理学を学ぼうと決心をいたしました。
しかしそれもまたどうにも現実的ではないと思い、半年を過ぎた頃には宗教世界に興味を持ち始めておりました。
その当時の私は宗教とはまったく縁がなく、それどころか十歳ごろからの私の僧侶嫌いは異常なほどで、金欄で着飾った僧侶を見ると吐き気がして、息を止めてその場を離れるといった具合で、そのような僧侶のそばで息をして抹香臭い匂いを嗅ぐものなら体が腐ってしまうと感じたものでした。
ところがある日の夕暮れ、地元の名士?が亡くなったのか、私の家に近い病院の前にズラリと、キンキラキンの花輪が並んでいました。その長さは優に100メートルを越えているのです!しかもそこを通らねば家には帰れない!仕方ない、そこを全力で(云うまでもなく息を止めて)走り抜けようと決心したその間、私は静かに深呼吸を重ね意を決しました。
「ヨーイ・ドン!」まっしぐらに走りました!無我夢中でした。しかし無理だった・・・。ついに途中であのみじめな息を継いでしまったのです。目がくらんで吐き気がしました!何故だか、あんなに墨染の衣に憧れている私であるのに、これも運命か!と心の中でそう思いました。
抹香臭い仏教は、なぜか私のDNA遺伝子が目の前で大暴れするため大嫌いなのです!それでも宗教を探し続けて行き着いたのが、ラジオの深夜放送、そこで聞いたのがキリスト教通信講座でありました。
毎晩首から十字架をかけてお祈りしていると、いつの間にか信心も深くなって、完全なクリスチャンになっていました。
しかし、どうしてもその先には行けず(あなた頼みの宗教では、どちらに転んでも大丈夫とは言えない)という幼少の頃からの切なる思いが湧き出てきて、ついに通信講座をも諦めてしまいました。
出家を目指して神の信仰をきっかけに宗教観が深まり、目覚めて人生に向き合うようになりました。
そして、次に自分なりに真剣に宗教を作る決心をしました。
それから1ヶ月ほどかかって理想的な宗教世界を練り上げ、ついに五つの信条なるものを考え、それを壁に書いて、毎日熱心に唱えました。
出家を目指してしかし、やっぱり納得がいかず、そろそろ五つの信条にも飽きて来た頃、遂に向こうからやってきました!
理想的世界がやって来たのであります。
ある日、何の気なしに立ち寄った本屋で遂に出会ったのです!《 禅 》しかもその入門書の中に表現されてある世界観は、実に私が1ヶ月間理想として考え出した宗教観と全く同じではありませんか!どういう事か・・・、とにかく嬉しかった。《 完璧な自己の自立と、普遍的世界との合一から実現される人類と一切の平和! 》
その思想が一気に私に向かって押し寄せてきました!力強く!そして抜群の説得力を持って・・・