第18章 武壇

自叙伝 武壇確か景美というところでバスを降り、数分歩いた所であったように記憶しておりますが大分記憶も薄れてきております。
ただあの瞬間だけは今でもはっきり覚えております。 それは今まで経験の無い異様な雰囲気であり、あの緊張感には凄みというか殺気に似たものまでも感じてしまいました。


自叙伝 武壇それは武壇について間もなく、 外で慌ただしく人の動く気配がしたかとおもうと突然私達を接待してくれた人が手に持っていた箒を壁に立てかけ、鋭く “大師が来る”と通訳に囁いた 。…その後自らも不動の姿勢で立っている。 私達二人は何のことか理解できずにいると通訳が突然 『あなた達も立って下さい!』 というものですから何事が起きたのか分からなかったが、我々も椅子から立ち上がりました。 でも、あまりにも突然なことなので何事かと思い、私は布の垂れ幕の隙間から外を覗いて見ました。


自叙伝 武壇そこで目にしたものは、街灯を背にして薄暗い路地を黒の帽子に黒マント、手には杖を持った人が静かに歩いて来るではありませんか。
 そのいで立ちと身のこなしは一見して、ただ者ではない雰囲気、たしかに凄い威圧感があって、皆も緊張する訳である、これが本物の武術家なのか!